発達障がい者に向いている仕事は何だろう?自閉症スペクトラム(ASD)グレーゾーンと仕事を考える。塾講師編

発達障害を抱える人間にとって、向いている仕事は何か?

わたしは仕事が続かなく、学生の頃のアルバイト時代から転職を繰り返していますので、「自分でも続けられる仕事はなんだろう?」「発達障害がある人間にとって、向いている仕事はなんだろう?」ということを自然と考えるようになりました。そうでないと、今後もただ転職を繰り返すことになるからです。

いろいろな仕事を体験すること自体は悪いことではないと思います。ではなぜ「もう転職を繰り返すのはイヤだ」と思うか?というと、もういいかげん疲れたからです。仕事をやめる度に「またダメだった」という気持ちになってしまうからです。

ただでさえ自己肯定感が低いのに仕事をやめる度に「今回もダメだった」「またうまくいかなかった」「どうして自分はこうなんだろう」、「自分は他の人みたいに出来ない」「ダメ人間だ」というようにますます自分に嫌気がさし、自己肯定感は下がる一方。

さらに家族で暮らしていれば「またやめたの?」などと必ず言われますから、自分でも十分苦しんでいるというのに、さらに塩を塗られて苦しみは広がります。

何か仕事をしていないとそれだけで自分がダメ人間のように思えてきますが、だからといて「とりあえず」とか「やみくもに」あせって面接に行っても失敗を繰り返すので、少しでも「自分の性質に合っていそう」だと思える仕事を探したい。

発達障がいを持つ人に向いている仕事について、ネットや本でさんざん調べました。いろいろ出てきますが、正直あまり参考にならず、もっと具体的に知りたいと思うことが多いです。ですので、わたしの体験を自分がその職業の中で感じたこと・向いていなかったこと・向いていると思ったことなどを書いていきます。

今回は「塾講師」です。

塾講師をしていたのはいつ頃?

わたしが塾講師のアルバイトをしていたのは自分が大学生のころです。なぜ塾講師というアルバイトをやってみようと思ったのか?それはもうごく自然に。大学生というものは、家庭教師とか塾講師とか、そういう勉強を教える仕事をするものだと思い込んでいたから、というのが一番大きいです。あと、他のアルバイトに比べて時給が高めだということもあったかもしれません。しかしこの時給はワナであることに後から気づくのでした。

塾講師のアルバイトで辛かったこと

人の前に立ってしゃべること

わたしは大勢の人の前で話すことが非常に苦痛です。今も昔も苦痛です。

塾の講師の仕事は、子どもの前に立って授業をすることです。集団授業の場合、集団の前に立って授業を行います。

つまりですね、当たり前ではあるんですけど、授業の間ずっと子どもたちの前に出て視線をあびるわけです。それが心地良いと感じる人もいるでしょう。そういう人にとって自分が担当する1授業の間は「自分の独壇場」ですから、大変華々しい・誇らしい気持ちで授業を行えることだと思います。そういう人にはまさにうってつけのアルバイトです。

しかし。わたしはそういうメンタリティの人間ではありません。人の視線を浴びれば硬直し吐き気をもよおすくらいに、注目されるとか目立つことが嫌いです。わたしが担当していたのは中学生の集団と小学生の個別授業でしたが、集団授業では必ず集団の前に立つことになります。
振り返って考えてみればどう考えても向いていなかったのに、なぜ塾講師なんていうアルバイトをやってみようとしたのか不思議なくらい。慣れれば大丈夫という人もいるかもしれませんが、わたしの場合はいつまでたっても集団になれることがありませんでした。

担当教科によっての、負担の差

塾講師は、自分が得意とする教科を教えます。たいてい、「英・数・国」は担当することになりますが、わたしは国語を担当していました。理由は、「国語が得意だから」ではなくて「数学と英語が苦手だし嫌いだから」です。国語以外に選択肢はありませんでした。数学と英語は人に教えられるレベルにはない、かと言って国語の能力が高かったわけではありません。消去法的に国語となったのです。

しかしこの「国語」という選択肢が、わたしには良くなかった。英語も数学も、正解は分かりやすく、特に数学は「1+1=2」以外の答えはないのですから、非常に明快。どんな教え方をしようと、導き出す答えは一つです。間違うことはないのです。

それが国語となると、試験という場であれば答えはもちろん一つですが、「うーーーん、でも考えようによってはそうともとれるよね?」みたいな問題が多数あります。

わたしは何事もつけても考え込みすぎる方だし、グレーゾーンという特性を生かして人の気持ちを考えすぎるところがありますから、問題文を読み込むところから非常に時間がかかりました。ABCと答えがあるとして、正解がBだった場合、ではどのような思考回路でBにたどりつくのか?AやCを正解としてもいいのではないか?試験の解答としては間違っている答えを正解と考えた子どもたちに、どのように伝えればいいのだろうか?

「試験は点数をとるのが目的だから、自分の思いとは違っていても、問題を出している人が正解であると考えているものを選ぶ必要があります。それがここでいう正しい解答です」と押し付けることはできるけど、それでいいのか?などと考え始めます。

国語の教師は、他の教科にくらべて「子どもたちがどのように考えてその答えを出したのかを認めてあげ(ある出来事に対して、その人がどのように感じても考えても自由なのだから)、その上で、正解へ導き方・気持ちの持ち方とか考え方を伝える」というメンタル的な負担が多いと思うのです。

国語で答えを否定するということは、その答えが「その問題では間違いとされている」というだけです。「その答えだと思った・そのように考えたその人自身や、考え方を否定するものでない」ということをしっかり伝えてあげたかったのです。その点、数学の教師は答えが一つで人格とか関係ないので、単純でいいなぁって思っていました。

同じ教科の先生同士は、比較されるプレッシャー

わたしは自分のメンタルが弱いので、他人のメンタル面も気になりますし、目につきます。授業で人格否定されたと傷付いたりしないように、いろいろな方向で認めてあげながら、褒めてあげながら授業をしたいと思っていました。しかしそれは「子どもにとって面白い授業」ではありません。

塾の講師は人気商売です。特に同じ時間・同じ学年・同じ教科を受け持つ先生とはどうしても比較されます。子どもから人気があることが大事です。

子どもが楽しいと思える授業、子どもの注目を集める授業。時には冗談を言ったり、こどもと打ち解けたり、楽しい雑談をしたり。

それらはわたしには苦手なことでした。すごく真面目に「いい授業をしよう」と努力はしましたが、「子どもたちを率先してまとめ、冗談など交えながら、興味を引き付ける」ということは難しいことでした。

当時、わたしと同じ国語を教えていた女の先生は、人気がありました。その場にいるだけで華やかなタイプ。わたしが誰かに「その先生と比べてあなたは・・・」と言われたことは一切ありません。子どもに言われた記憶もありません。

それでもわたしは勝手に「プレッシャー」を感じ、こんなに心を砕いて時間を使っているのに、なんか楽しそうなあの先生の方が人気があるんだよな・・という思いはぬぐい切れませんでした。わたしは「わたしが教えてる子どもたちは、わたしが教えているから、あの人気のある先生からは教えてもらえなくてお気の毒」とさえ思っていました。

見せかけ時給は高いけど、結局は低い

時給だけみると高いような気がする塾講師。実際の時給はどのくらいなのでしょうか?

わたしが住んでいる地域の塾講師アルバイトの時給をざっと調べてみたところ、

1130・1500・1200・2300・1400・1700・1600(円)・・・

このような感じでした(2019.11現在)。塾講師の給与体系は時給ではなくて1コマ単位のものあり、1コマは会社によって違います。1コマ80分のところもあれば、1コマ120分のところもあります。1コマ単位でみた場合、すごく給与がいいような気がすることがあるので要注意です(上であげた時給は60分のものです)。

当時のわたしの時給は忘れてしまいましたが、仮に1500円としましょう。他のアルバイトが時給850~900円位でしたから、破格に高い時給です。

ここで問題となってくるのは、時給とは何か?ということ。塾講師の時給というのは「授業をしている時間に対しての時給」です(準備時間や子どもの送り出しなどの時間も時給がもらえる塾もあるかもしれませんが、わたしは授業時間のみのお給料でした)。ということは、効率よく稼ぐためには「授業時間しか仕事をしない」ことが一番です。授業時間以外の時間をいかに削るか?が勝負になります。

ここで、数学の講師がうらやましいと思ったことを思い出して下さい。「答えが一つのもの」に対するアプローチもいろいろあるでしょうけれども、「答えはどうとでも取れる可能性があるものを一つに絞る」ということから始めるほうが、はるかに時間がかかるであろうことは分かっていただけると思います。

発達障がいの人間は、真面目であったり純粋であったり、人の役に立ちたいという気持ちが強かったりする傾向があるみたいですが、あくまでも自称のグレーゾーンであるわたしもまさしくそんな性質と持っています。手を抜いた授業をしたことは一度もなく、誰にもでも分かりやすく、誰でも納得できる、それでいてみんなを認めてあげられるような授業をつくろうとしていました。

わたしは、時給がいくらもらえるからといったことはまったく考えず、ひたすら授業のことばかり考えていました。1時間の授業に対し、前日の夜から机に向かって「ひとつの質問に対して、子どもがどのように反応してくるか、ありとあらゆる反応とそれに対する自分の対処法」をテキストに書き込みはじめ、授業当日の午後も授業のことを考え、塾へ向かう間も話す方法とか切り出し方などをずっと考え続けていましたから、ざっと5時間以上は使っていたんじゃないかな。1時間の授業の時給が1500円として、準備に1時間かかったら、仕事をした時間は2時間なので、実質時給は750円になります。準備に5時間かかったら授業時間と合わせて6時間ですから1500÷6=250⇒時給250円。

コンビニのアルバイトの方が、よっぽど時給がいいじゃん!とよく思ったものです。効率を考えて、適度に切り上げて授業を行わないと身体を壊します。クソ真面目なのでムダに思い詰めてムダに時間もエネルギーを注ぎ込んでいました。やればやるほど「労力と収入」が釣り合わなくなっていきますし、そもそも子どもの前に立つのはキライなんですから、いったい何をやっているのか矛盾だらけです。

塾講師のアルバイトで楽しかったこと

集団授業はひたすらつらかったですが、小学生相手の個別授業は楽しかった。個別授業ではわたしが苦手とする

「1(わたし):集団」という構造ではなく「1:1」だったということが最大のポイントです。

相手が集団だと、どんな年齢層であれわたしは委縮します。相手が偉い人だからとか自分より年上だからとかではなく、赤ちゃん集団でもダメです。体はこわばり、心も一瞬で閉じて、ひたすら緊張するのです。

しかし個別授業は1:1なので、集団を相手にするプレッシャーがありません。特に1:1で雑談しているような時は最高に楽しかったのを覚えています。何を教えていたのかは全く覚えていませんが、雑談で話した内容は20年以上たった今でも覚えています。

また、授業の準備は(時間がかかり過ぎてはいたものの)楽しいものでした。この場合の楽しいは「あっはっは!」という楽しさではありませんが、どう伝えれば子たちに分かってもらえるだろうか?と様々は角度から考えることは興味深かったし、それを授業で実践して子どもが理解できた時は単純に心から嬉しかったです。

発達障がい者に塾講師は向いているのか?

塾講師と一口に言ってもいろいろな種類があります。

わたしの場合は集団はダメだったけど個別はわりと楽しめました。

また塾講師の一番大きな特徴として「立場的に相手が自分より下」ということがあります。これは一般の企業ではなかなかない構図です。通常、お客様は常に自分より上ですが、塾講師のお客様=子どもなので(正確に言えばお金をだしてくれるのは保護者なので保護者がお客さまですが、直接的な働きかけは子どもに対してなので、子どもが「自分が相手とするお客様」であるととらえています)社会的な立場としては弱く、自分が「教える側」の立場なので自分の方が強いのです。

対人関係が苦手であっても、この構図ならやれるという人もいるとか思います。お客様にペコペコ頭を下げることもありませんし、社員やアルバイトの人間関係も、授業の間は「自分一人が大人という空間で過ごせる」という点でもラクです。

子ども相手の仕事は学校の教員もありますが、教員よりは塾の講師の方がはるかに「人間関係」はラクだと思います。というのは、塾は目的がはっきりしている場所だから。「成績をあげる」とか「テストで点をとらせる」のが目的なので、そこに集中すれば良いからです。

学校となると教科以外の指導も多く、道徳的な人として教えなければいけないことが多数あるので、教師と子どもの人間関係がもっともっと複雑にからみます。同じ学年を担当する他の教師との関係や、同時に付き合っていかなければいけない教師は同じ学校に何人もいます。仮に1学年3クラス×6学年だとしたら教師だけで18人!

塾の場合は、1校に社員は数人だし、その他はアルバイト。それにアルバイトは担当する時間にしか来ませんから、普段は少ない人数で過ごせます。アルバイトが出勤してこない時間帯の塾内は、とてもひっそりしているものです。

今こうして振りかえってみると、わたしが中学生として塾に通っていたとき、社員だった講師はかなりの変わり者が揃っていました。彼らが発達障害持ちだったのかは分からないけれど、塾というのは変わり者でも受け入れてもらいやすい、過ごしやすい職場なのかもしれません。

塾講師、こういう人には向いている

塾には塾特有の状況があるので、以下のような状況が好ましいと思う人には向いている職業だと思います。

  • お客様にペコペコ頭を下げなくていい(相手が子どもなので)
  • 授業がしっかりできれば、不愛想でもなんとかなる。
  • 立場的に自分が上の状態・優位な状態で仕事が出来る。
  • 目的(点数を上げるとか)に集中できる。
  • 成果が目に見える(子どものテストの点数・順位・成績として現れる)
  • 基本的に、静かで落ち着いた環境
  • 付き合う人間が少ないので、他の仕事に比べたら人間関係は割合ラク

また、

  • 人の役に立ちたい
  • 授業の準備時間や、より分かりやすい授業の為に日々工夫するなどの努力は苦ではない

という人にもいいと思います。成績が上がったり、テストでいい点が取れれば感謝をしてもらえます。「人の役に立ちたい」というモチベーションを持つ人間にとって、感謝されることは最高のご褒美だし、やる気にも繋がります。「わたしは人の役にたった、ここにいていいんだ」と思えるようになるでしょう。もちろん、自己肯定感アップにもつながります。

 

 

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